虫をさわろうとする子に対して、「気持ち悪いからやめなさい」なんて、つい言ってしまいがちですが、実は子どもは虫捕りからたくさんのことを学ぶことができます。
創造性、忍耐力、集中力・・・いろいろなものを養ってくれるのに、近場でやればかかるお金は0円!
虫捕りはお金をかけずに、子どもの頭をフル回転させ、同時に身体も鍛えてくれる、最高の遊びなんです。
続けるうちに少しずつ親の方も慣れてくるので、虫への苦手意識は減ってくると思います。いつの間にか私のように、親子で虫好きになっているかも…!?
虫好きに育った息子たち。「体験+読書」の相乗効果で知識を深める
お子さんは虫が好きですか? チョウやバッタを捕まえることはできますか?
近年は香川照之さんの『昆虫すごいぜ!』の影響もあって、虫の生態や虫捕りの面白さが再認識されていますが、男女関係なく、虫捕りは子どもたちの心の栄養になってくれます。
長男はアリに始まり、ダンゴムシ、チョウ、トンボ、バッタ、コオロギ、クワガタムシ、カブトムシ・・・他にもいろいろな虫を、家からそう遠くないところで捕まえてきました。
また、国内外問わず旅行先では、虫にかかわる施設や展示がないか調べ(意外とあるんです)、見つけたら必ず足を運んでいました。
近所での虫捕りに加え、旅先での知識を深める経験、さらに虫に関する本をたくさん読み漁ることで、長男は無類の虫好きに育ち、それを見て育った次男も、4歳にして立派な虫好き少年です。
おすすめの虫絵本や図鑑は、最後にご紹介します。まずは、なぜ虫捕りや虫の生態に興味をもつことで、子育てにどんなメリットがあるかをお伝えします。
昆虫は子どもたちにとって、「感性の栄養」をもらう友だち
我が家の“虫育”は、医師夫の「生き物に興味をもつ子に育てた方がいい」という言葉から、なんとなく始まったものでした。
けれどある時、絵本・児童文学研究センターの文化セミナーで「子ども時代がつくるもの -昆虫に学んだことー」という講演があることを知り、飛びつきました。
講師は、養老 孟司さん(脳科学・解剖学)と、昆虫絵本をたくさん手がける今森 光彦さん。壇上でのトーク形式でした。
たくさん学びがあったので、メモを元に書き出してみます。
●今の子どもは決して恵まれていない。自然の豊かさを知らない。知るための環境がない。
●虫を殺してはいけないと注意しすぎる親がいるけれど、生態系ピラミッドで考えたら、命の数の単位がそもそも違う。人間の子どもなどへのかっぱ!
●子ども時代は食べるだけが栄養でない。昆虫は子どもたちにとって「感性の栄養」をもらう友だち。いつも尊厳をもって付き合っているので、将来殺人鬼になどなったりしない
●今の子は背後の「環境」を理解するのが苦手。図鑑などで虫のことを知っている“虫博士”ではなく、実際にカブトムシが住む雑木林に行って、木漏れ日や暑さ、苔むした幹を持った時の冷たさなどを体感してほしい
●昆虫を通して環境を知る、横の関係性を見ていくことが大事。「生物多様性」とは、お互いにかかわり合って全員が生きていることの大切さを理解すること
●昆虫は神様が子どもたちにくれたプレゼント。子どもが手に取れる(確保できる)ので学びが無限
●日本人は農業をしながら、虫や自然を愛でて生きてきた。小さなもの・季節の変化に目を配る精神性は大切にするべき
●特に未就学のうちは、たくさん自然に触れて、小学校中学年くらいまでの理科の準備をしないといけない。子ども時代で理科がない時期はない
●ケガをさせてはいけないとヒヤヒヤする人はだめ。「カエルを触ったことのない高校生」…そういうことの方が怖い
この講演を聴いて、子どもに虫捕りさせることと、命の大切さを教えることの間で揺れ動いていた気持ちの整理ができました。
もちろんむやみにつぶしたり、エサが用意できないのに飼おうするのは止めますが、それ以外は見守ることにしています。
未就学のうちに生き物にたくさん触れて、見たり感じたりという感覚を獲得すると、入学後の理科で生きてくるというお話を聞いて、もっとくわしく知りたくなりました。
小さい頃に虫捕りをたくさんすると、脳に良いことがいっぱい!
そこで、手に取ったのが下の本です。
これも養老 孟司さん・池田 清彦さん(生物学者)・奥本 大三郎さん(仏文学者)3人によるトーク形式の共著です。
この本は、前半は幼少時代の虫捕りが子どもに与える効果について、後半は主に虫と環境のお話です。
前半で印象に残ったのは、虫捕りをすると具体的に物を見るので、知的な世界でも、概念にとらわれずにリアルにものを見られる(考えられる)ようになるということ。
小さい頃に自然や生き物に触れていない子は、感覚で世界を捉えることが苦手で、捉える前から脳にある「概念化フィルター」をかけてしまうそうです。
目で見ているのに、きちんと見えていない。「ちゃんと見える人」と同じ見方をすることができないというのは、すごく怖いことだと思いました。
虫好きな子に育てたいと思ったら、小学校中学年くらいまでに虫と触れ合う経験をするべきです。
虫好きの子はよく虫の絵を描きます(ずっと飼うことは難しいから、何かの形で残したいのかも)
高学年になると、言語能力が付いてくる反面、図鑑で見たような常識的な絵しか描けなくなる子が多いそうです。
長男(小3)の絵を見てもわかるように、カブトムシを握ったことがある子は、いかにも痛そうな足のトゲをリアルに描きます(そこにしっかりとスペースを割いています)
図鑑でしか見たことがない子はそのあたりがいい加減で、多くはツノから先に描くようになると書かれていて、なるほどと思いました(私もその虫の概念を思い浮かべてからでないと描けないので)
具体的に見るということに関連して、子どもたちの「学び方」にかかわる大切な部分があったので、抜粋します。
池田さん「自分なりの概念を持つことは大事だけど、それには、なによりもまず世界のディティールを見ること。これが絶対に必要。
ディティールが見えると、おのずと自分なりの価値基準ができあがる。難しくいえば、自分なりの『同一性の尺度』ができる。『あなたがたはそう言うけれど、私はこう考える』って、言える。新しいものって、すべてそこから生まれてくるわけでしょう。」
養老さん「そうそう。つまり、いちばん大切なのは、ディティールが見える、感じられるということなんですよ。概念を作るときに大事なのは、感覚を失わないことなんだ」
子どもの個性は、「感性」によってつくられるのに、学校などで教育できるのは「概念」の方だけ。
個性を磨くには外に出るしかない。自然の中で思い切り遊べ!と、この本の前半部分は締めくくられていました。
改めて知識を詰め込んで育てるのではなく、外での五感をつかった体験を大切にしたいと思いました。
養老先生は脳科学の研究者でもあります。
数ある遊びの中でも虫捕りがなぜいいかというと、ほぼ理想的に脳が回転するからと書かれていました。
虫を見て「いた!」と思ったら、筋力を動かして、捕まえて、自分で調べて、標本を作って(絵を描いて)、考えて、また虫を見て・・・という具合に、情報が連鎖しながらぐるぐる回り続けます。
外界からの情報が感覚を通して入ってくる(インプット)
➡︎ 計算して考えて
➡︎その結果が肉体の運動として出ていく(アウトプット)
➡︎ 出た結果が再入力される(アウトプットの再入力)
このインプットとアウトプットの回転が、知的作業において最大の武器となる「カンの良さ」を育ててくれるそうです。
学校教育の大半は、知識のインプット。アウトプットが少ないと、脳の回転が止まってしまいます。
入口(感覚)と出口(運動)を塞がずに大きくしてあげるといいと書かれていたので、やはり小学校中学年くらいまでは学校・塾任せにせず、親が足りない部分をカバーする必要があります。
小さい頃から虫を気持ち悪いものとしないで、虫好きに育ててあげることは、地頭を育てるための作戦の一つと言えそうですね。
キラキラした目で虫を捕まえる子どもたちを見ていると、親の方もワクワクしてきます。虫捕りは子育てをより楽しくしてくれます!
虫捕りに役立つ本をご紹介します【図鑑】
虫捕りや外遊びが大切なことはわかりますが、じゃあ外で遊ばせておけばどの子も賢く、知的好奇心旺盛に育つのかというと、答えはNOです。
上記の養老先生の解説でもわかるように、虫捕りをした後、標本を作ったり自分で調べたりする作業をはさむことで、脳のアウトプットの再入力が意味のあるものになります。
先ほどの本の中で面白い箇所があって、世界的に見て虫好きに育てるには、発展しすぎの都会でも、発展途上の田舎で自然に埋没していても、だめだそうです。
その中間の程よい「町の小さな図書館に虫の図鑑が置いてある程度」の田舎がいいと書かれていました。やはり本は大事です。
虫関連の本は、欲しがるのでいろいろと購入しました(下写真)。図鑑や「最強昆虫〜」といった読み物、絵本に幼年童話。図書館でもたくさん借りて読みました。
虫絵本の多さを見ても、日本人が虫を興味の対象・鑑賞の対象として見ていることがわかります!(外国の絵本に、虫がテーマのものは少ないです)
今日は、その中からおすすめの本をご紹介します。まずは、虫捕りに役立つ本から。
幼児〜小学校低学年 虫がテーマの絵本・幼年童話
続いて、虫をテーマにした絵本や幼年童話をご紹介します。
あれもこれもとどんどん思い浮かんでくるほど、虫絵本はたくさんあります!
「
おまけ:飼うのにおすすめの虫
最後に、この10年弱で飼ってきて良かった(飼いやすい・勉強になる)虫をご紹介します。
羽化までの過程を見せてあげたいなら、カブトムシの幼虫から飼うのがおすすめです。
北海道には本州から持ち込まれたカブトが少数生息しているだけなので、今年は幼虫をヤフオクで購入。
1000円くらい(+送料)で15匹も送っていただきました。愛知→北海道でしたが、みんな無事に届きました。
腐葉土は100均でOK! 5月から飼い始め、7月中旬には地上へ出てきました。子どもたちは大喜びです。
100均の昆虫ゼリーを食べながら、今も元気に暮らしています。
近所で捕ってきた道産子カブトも何匹か入れたので、これから卵を産んでくれたらいいなと思っています。
カブトの幼虫は今年初めてですが、昨年までは長男が欲しがるクワガタの幼虫を購入して、羽化させていました。
でもクワガタは腐葉土でなく菌糸ビンが必要だったり、卵を産むのも土でなく朽ち木なので、お世話にお金と手間がかかります。
その点、カブトの方が楽なのでおすすめです(飼育中ケンカが少ないのもいいです)
クワガタは近所で捕れるので、毎年夫と子どもたちで捕獲に行っています。今も飼育中。
チョウの羽化も、小さい子にとって驚きと学びがたくさん!
ありがたいことに、次男の幼稚園の先生が虫好きで、今年はキアゲハの羽化を見せてくださいました。
アオムシの成長スピード、サナギから想像以上に大きなチョウが出てくることなど、いろいろ感じられたようで虫への興味がより強まりました。
長男の小学校でも、アゲハの羽化を観察したそうです。
アゲハを呼ぶには食草を植えないといけないので、まだ我が家ではチャレンジできていません。来年はプランターでヘンルーダというハーブ(アゲハが好む)を植えてみる予定。
未就学児におすすめなのは、ダンゴムシの飼育です。小さめの虫かごに、100均の腐葉土と落ち葉を入れて、しっかり保湿してあげれば、元気に育ってどんどん繁殖します。
自然に帰したくなったら、ダンゴムシのいるところへ虫かごを持って行って、ひっくり返せばいいだけ。
次男は登園中に見つけたダンゴムシを○○○匹!? 飼っていましたが、夏休み前に林でお別れしました。
(ダンゴムシの捕獲には、写真右の小麦粉パウダー容器が便利です☆)
写真左は、苦手な人も多いと思いますが、今年見つけたアリの幼虫です。
普通は巣の中で子育てすると思いますが、地面の上で幼虫を運ぶアリたちを見つけて、次男と連日観察していました。
アリを飼うのはハードルが高いですが、働きアリたちの勤勉さ、女王アリの役割などを見ていると、学びが多いと思います。
【おまけのおまけ】
今年長男が興味をもって観察していたのが、庭に来たハサミムシ。
外でBBQ中にやってきて、落ちていたチャーハンのごはん粒に抱きついて、最後までおいしそうに食べる様子を見て興味レーダーがONに!
ハサミムシ(雑食なんですね)を見つけるたびに、ごはん粒をやって食べる様子を観察したり、図鑑で調べたりしていました。
こんなふうに? 近所で捕まえられる虫から、ぜひ親子で虫捕りを楽しんでみてください。
虫の科学絵本などを読むと、親子の会話も弾んで、お子さんの探究心はどんどん広がるはずです。
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[…] 虫の記事でも書きましたが、虫好き長男と頑張って読んだ思い出のシリーズです。虫が苦手な親御さんも多いと思いますが、ファーブル昆虫記を読むことで、虫のどういうところが面白いのかわかると思います。虫の生態の不思議さ・奥深さに驚き通しでした。 […]