【子どもと本の教室】0歳(0〜5カ月)の発達と絵本選び(ファーストブック )

「たくさん並んでいる絵本の中から、どれを選べばいい?」
「この絵本、この子の月齢に合ってる?」
「どんなふうに読めば聞いてくれるの?」

赤ちゃんのお世話で忙しい日々、絵本のことまで調べるのは大変です。
「子どもと本の教室」では、そんな親御さんの絵本選びをサポートするための情報を、“教室”形式でお伝えしていきます。

まずは、生まれたばかり、0〜5カ月頃の子の発達と絵本選びについてです。

目次

「子どもと本の教室」について

わたしがこのブログを作ったのは、絵本を選びにきた親御さんのサポートをするためです。そこで、“絵本教室”のような内容の記事を書いてみることにしました。

絵本・児童文学研究センターの基礎講座や書籍などから学んだこと、そして、それらの情報をもとに息子たちの読み聞かせをしてわかったことも合わせて、0歳から順にお伝えしていきます。

未就学児の発達は下の図のようになっているので、その流れで書きます。

本は私たちとって「一番身近にある文化」。絵本の読み聞かせをすることで、親も子も心が豊かになります。

それに、読むことはすべての学びの土台。「ChatGPT」の登場が話題となっていますが、便利なツールを使いこなすには深い読解力と知性が必要です。

本を読むことに慣れ親しみながら育てる「読育(よむいく)」を、ぜひ取り入れてみてください。

それではさっそく、生まれて間もない「0歳の読育」について、絵本と子どもの教室を始めます。

読み聞かせをする時に気になる! 視力の発達

生まれて間もない赤ちゃんの視力がどのくらいか知っていますか?

実は、生後2カ月頃までは、0.01〜0.02くらいだと言われています。30cm先がぼんやりと見えている程度。

色も何でも認識できるわけではなく、黒・白・グレーが見やすい色で、輪郭のはっきりしたものの方がよく見えるそうです。

その代わり、お母さんのお腹にいる時から発達しているのが聴覚。生まれた直後からお母さんの声を認識できるそうです。

その後は、

  • だんだんいろいろな色を認識するようになる
  • 焦点が合うようになる
  • 動くものを目で追えるようになる
  • 見たものを手でつかめるようになる
  • 見たものなどを“短時間記憶”できるようになる

こんなことがだんだんできるようになっていって、1歳頃に視力0.1〜0.2くらいになり、立体視もできるようになります。

1歳を迎えるまでの一年間が、赤ちゃんの成長にとって重要なことが改めてわかりますね!

そして3歳まで視力が急速に発達して、幼児期のうちに大人と同じ視力1.0になると言われています。

0〜5カ月頃の子の発達、絵本の選び方(ファーストブック )

0〜5カ月頃の赤ちゃんは、視力はまだ弱いですが、聴覚は発達していることがわかりましたね。

そう、積極的な声がけや、絵本の読み聞かせにはぴったりの時期なんです。我が家では病院から戻ってすぐに読み聞かせを始めました。

自分では何もできず、100%親に依存している赤ちゃん。布団の上でごろごろしているだけのように見える時期ですが、実は一生懸命に五感を発達させ、世界を知ろうとしている時期でもあります。

家族からの声がけ・読み聞かせで程よい刺激を与えてあげましょう。

赤ちゃんに最初に読み聞かせる絵本を「ファーストブックと言いますが、選ぶ時のポイントは、赤ちゃんの発達に寄り添っていることです。

① 人や動物の正面が描かれていて(横顔は理解できない)、目鼻立ちがはっきりしている
② 最初は目に優しい中間色から、見る力がついてきたら白と黒のコントラストも
③ 赤ちゃんは破裂音など楽しい音の響きが大好き(擬音語・擬声語)
④ コミュニケーション(特に触れ合い)のきっかけになるようなお話になっている
⑤ 3歳くらいまでは「母子一体」の感覚が強い時期。絵本の中にも「お母さん」が出てくると安心

①〜⑤までのポイントをなんとなく頭に入ながら、書店で選んでみてください。

「ファーストブックに最適!」「初めての絵本選びに」などと書かれている絵本から選ぶとよいのですが、例えば下の『いないいないあばあ』は0歳向け絵本としてロングセラーとなっている良書です。

「ファーストブック 」として売り出されていることが多いのですが、実は生後半年を過ぎた頃でないと本当の意味では楽しめない絵本なんです。

物があって、それを隠した時に、「後ろに物が隠れている」ということを理解する(記憶しておける)のが、0〜5カ月の赤ちゃんにはまだ難しいからです。

同じ0歳といっても、月齢で発達が大きく違うので、少し注意が必要ですね。

我が家で0〜5カ月の頃に読んだ絵本を、選ぶポイントとともに紹介していくので参考にしてください。

絵本を使ってコミュニケーション

0〜5カ月頃の赤ちゃんにとって、絵本は内容を理解して楽しむものではありません。

お母さんとのコミュニケーションを楽しむもの、それに尽きます(もちろんお父さんや兄弟姉妹でもOK)

お母さんも赤ちゃんの布団の横に寝っ転がって、気分転換のつもりで、絵本を開いてみてください。

赤ちゃんにどんな声がけをすればよいかわからない親御さんにもおすすめです。この時期の絵本は、赤ちゃんに語りかけるような文章になっているものが多いでのが特徴です。

絵本を開いて読み始めると、「なに? なに?」という顔で見てくれたり、そっぽを向いてしまったり、いろいろな反応をする赤ちゃんがいると思います。その子の機嫌に合わせて、無理せず行いましょう。

赤ちゃんとのコミュニケーションを促してくれる、おすすめ絵本を3冊ご紹介します。

『わんわんおかお』とよた かずひこ

【内容】24ページ
いぬさんのおくちはど~こ? ねこさんのおめめはど~こ? 動物たちが目や鼻や口を指差して教えます。
指差しをはじめた赤ちゃんに(アリス館)

【manpukuポイント】
赤ちゃんの目に優しい色合い、まんまるの顔と目の動物たち、「わん わん わん」「ぶー ぶー ぶー」といった音の響き、赤ちゃんの好きなものが揃ったバランスの良い0歳向け絵本です。
お話に合わせて顔のパーツに触っていくと、自然と親子のコミュニケーションになりますよ。

【おすすめ年齢】
0〜1歳

「おくちは どーこ?」ときくと、

「ここですよ」と教えてくれる、こんな2場面構成になっています。

次々と動物が出てきて、似たやりとりが繰り返されます。

最後に人間の赤ちゃんも登場します。

お父さんがほっぺを触ります。

こんなふうに、赤ちゃんとのコミュニケーションの仕方を教えてくれるようなお話になっています。

もちろん0歳だけでなく、何歳になっても楽しめる絵本です。

『くっついた』三浦 太郎

【内容】24ページ
ページをめくると…、くっついた! そのくり返しが楽しいあかちゃん絵本。
金魚、アヒル、ゾウ、サルが、思い思いのやり方で「くっついた」。
最後は、あかちゃんをはさんで、お父さんとお母さんも一緒に「くっついた」(こぐま社)

【manpukuポイント】
この絵本も『わんわんおかお』のように、次々と動物が登場する、2場面構成の絵本です。アヒルがくちばしをくっつけたり、ゾウが鼻をくっつけたりします。
最後にお母さんと「わたし(赤ちゃん)」、そこにお父さんも登場して、みんなでほっぺたをくっつけます。

【おすすめ年齢】
0〜1歳

『くーくーねむりんこ』南 椌椌

【内容】30ページ
くーくーすやすや、ねむりんこ。ねむっているのは、だあれかな…。
美しいガラス絵の世界が、やさしい眠りをさそいます(アリス館)

【manpukuポイント】
ふわふわと幻想的な夜空の絵が印象的な「おやすみ絵本」です。ぜひ一度手に取って、中をのぞいてみてください。
繰り返される言葉の響きも温かくて、赤ちゃんと一緒にお母さんの気持ちも癒してくれると思います。

【おすすめ年齢】
0〜1歳

楽しい言葉の響きが大好き

0〜5カ月の赤ちゃんは視覚より聴覚が発達しているので、声や音に敏感に反応します。絵本の方、お母さんなどが話す方を、じっと見つめてくれるかもしれません。

とくに好きなのが、擬音語(わんわん・ざーざーなど)、擬態語(きらきら・にこにこなど)、破裂音(ぱ行)です。

赤ちゃん向けの絵本ではたいていこれらの言葉が使われています。

音の響きが楽しいおすすめの2冊を紹介します。

『ぴよ ぴよ ぴよ』平野 剛

【内容】20ページ
最初は「ぴよぴよ」とひよこが1匹。ページをめくるたびにひよこが増えていきます。
そんなにぎやかなひよこの行列を、黒いこねこがからだを低くしてねらっています。
それをみつけたにわとりのおかあさんが、こっこっこっ! とこわい顔をして黒いねこをよせつけません。 「ぴよぴよ」という音が赤ちゃんには心地よく、ページをめくるたびに「ぴよぴよ」がどんどん増えていくことが楽しい絵本です(福音館書店)

【manpukuポイント】
オレンジを基調とした目に優しい絵本です。地平線から次々とあらわれるヒヨコたちが「ぴよ ぴよ ぴよ」と鳴く声だけが文章になっています。
その中の一匹だけがオレンジ色のヒヨコになっていて、鳴き声もオレンジ色。読んでもらった子が感情移入する一匹を見つけられるように、作者さんの工夫でしょうか?
オレンジ色の「ぴよ ぴよ」だけ、少し強調して読んであげると楽しい読み聞かせになります。

【おすすめ年齢】
0〜1歳

イメージがわかないと思うので、実際に中身をのぞいてみてください。

こんなふうに、次々とヒヨコが顔をあらわします。一匹だけオレンジ色のヒヨコがいますね。

黒猫におそわれることなく、無事にヒヨコたちはお母さんニワトリの元にたどり着きました。

絵本選びのポイント⑤でも書いていますが、3歳くらいまでは「母子一体」の時期。
“自分の身体の一部がお母さんで、お母さんの身体の一部が自分”という、依存の感覚をもっています(これをしっかりもてた方が、その後の親離れが早いそうです)

だから絵本の中にも、「お母さん」が出てくると安心します。この場合はニワトリのお母さんですね。

もちろん0〜5カ月頃の子にお話の理解は無理なので、「ぴよ ぴよ」という音の響きを一緒に楽しむ気持ちで読みましょう。

『ぽんぽんポコポコ』長谷川 義史

【内容】ページ
いろんな動物が次々とおなかをポコポコたたいていくユーモラスな絵本。
お父さんも赤ちゃんのおなかをポコポコ。さいごにお母さんが赤ちゃんのおなかをそっと「ないない」。
楽しいリズムで、赤ちゃんと一緒に遊べます(金の星社)

【manpukuポイント】
「おなか」をテーマにした赤ちゃん絵本。「ぽんぽん ポコポコ」という響きの繰り返しが楽しいので、赤ちゃんのお腹に触れながら読むとよいでしょう。

【おすすめ年齢】
0〜1歳

見る力がついてきたら「コントラスト絵本」も

0〜5カ月頃の赤ちゃんにも識別しやすい色、それが白と黒だと言われています。

生後2〜3カ月頃になってくると、体重も増えて身体がしっかりしてきて、いろいろな物への興味も出てきます。目のピントも合わせやすくなってくるそう。

その頃ぜひ取り入れてみてほしいのが、白と黒を基調にした赤ちゃん絵本です。

我が家では紹介する2冊を読み聞かせしていましたが、すごく興味をもってくれて、じっと見つめてくれることもありました。

わたしは幼児期に目を鍛えることが、賢い子に育てるために大切なことだと思っています。
目(と指先も)は、脳と密接につながっています。見る力を高めることで、発見する力や判断する力を高めることができます。

『しろとくろ』新井 洋行

【内容】26ページ
しろとくろがぐにゃーとのびたり、ちぢんだり。いっしょにあそんでいるみたい!
赤ちゃんの目線で作られたおどろきの絵本です(岩崎書店)

【manpukuポイント】
顔のついた白と黒が、いろいろな動きを楽しんでいるような色彩絵本です。顔もくっきりしているので、赤ちゃんにも見やすいと思います。
次男に読み聞かせした絵本なのですが、とても興味をもってじっと見てくれました。

【おすすめ年齢】
0〜1歳

最初のページはこんな感じ。

「ぐるぐる」とうずを巻いたり

「ぼんっ」と破裂したり

しましまなど、いろいろな模様を作ったりします。

頑丈なボードブックでできているので、乱暴に扱ってもいたみません。

姉妹編として『カラフル』もあるので、『しろとくろ』を気に入ったお子さんには、ぜひこちらも読んでみてください。

作者の新井 洋行さんは、この他にも赤ちゃん・幼児絵本をたくさん作られています。
『しろとくろ』が気に入ったら、同じ色彩絵本の『いろいろ ばあ』と『もっといろいろ ばあ』もおすすめです(1歳くらいから)

『どうぶつ絵本 はじめまして』グザビエ・ドゥヌ

【内容】20ページ
白と黒を基調に描かれた、かわいい動物たち。表紙はウレタン素材の立体で、温もり感にあふれます。
各ページにあいた穴から次のページがのぞく、遊び心もいっぱいの赤ちゃん向け絵本です。
お洒落で、贈り物にも最適(小学館)

【manpukuポイント】
海外の書店で、初めてグザビエ・ドゥヌさんの絵本を開きました。洗練された描線の中に温もりが感じられる作品に一目ぼれ。長男と何度も読んだ絵本です。
いろいろな動物が出てくるので、言葉を覚え始める1歳以降まで楽しむことができます。

【おすすめ年齢】
0〜1歳

乳幼児期の読み聞かせは「無理はしない」

いろいろ書いてきましたが、0〜5カ月に限らず、乳幼児期の読み聞かせは「無理はしない」ことが何より大切です。

絵本を「おもちゃ」の一つだと思って、ちゃんと見て・聞いてくれなくても、なめたり破いたりしてしまっても、何も問題ありません。

○歳までに何万冊など目標を掲げて始めるのも、わたしは反対です。大切なのが冊数ではないことは、大人の読書と同じです。

生まれもった性格もあるので、「読み聞かせは向いていないかも?」と思うことも出てくるかもしれません。わたし自身、長男は好奇心旺盛で動き回りたいタイプなので、1〜2歳頃の読み聞かせには苦労しました。

いつか本に興味をもってくれるように種まきは続けながら、

赤ちゃんの気分が乗らない日は、さっと切り上げる。

お母さんも赤ちゃんの隣りにごろんと横になって、自分が楽しむつもりで読む。

絵本を開かない日が続いても、別に大丈夫。

それくらいのゆったりとした気持ちで続けましょう。

『三びきのやぎのがらがらどん』など、数々の翻訳絵本を手がけた瀬田 貞二さんは、「絵本は子どもが最初に出会う目で見て、耳で聞く文学である」と言っていますが、本当にその通りだと思います。

一冊一冊の絵本を大切にして、楽しいお話・言葉のもつ響き・美しい絵を親子で味わいたいですね。かけがえのない思い出になりますよ。

最後に、0〜1歳の絵本は汚したり壊してしまうことが多々あるので、図書館で借りるのではなく、購入するのがおすすめです。

ぜひこの記事を参考にして、お子さんのファーストブックを選んでみてください。質問もいつでも受けつけています。

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